ダイソン エアマルチプライヤー AM07DC BN ブラック/ニッケル

去年の二月頃、レンタルDVDで『オブリビオン』というSF映画を見た。トム・クルーズ主演で、人類がほとんど余所へ移住したという未来の地球上を舞台に、天空に在る小さな居住スペースをベースに、任務を与えられた男女が日々パトロールを行っているが、ある日……という話。居住空間や偵察機、バイクや武器といったデザインが、モノトーンを基調としてとにかく格好いい。個人的に好きな類のデザインだったのだ。
大学生の頃、真っ白な部屋に憧れてそれを実現させるべく、実家から抜け出し一人暮らしをした。買ってきた板をペンキで白く塗り床に敷いたりした。家賃を払うのが苦しくて半年で実家に戻った。その後は、「モノトーンというのも、童貞のおしゃれ感覚みたいで格好悪いな」と思い、木目中心のナチュラルテイストなインテリアにはまっていった。
しかし『オブリビオン』を見たことで、己の中で封印していた“未来的なモノトーン好き”が目をさました。さあ、インテリアを未来的なモノトーンにしよう、と思っても、狭い賃貸部屋でできる事は限られた。たとえばベッドはタモ材だから白い物に買い換えられるだろうが、白黒家具は安物だと下品な化粧板を用いた物になる場合が多いから、チープ感が増す。もっと手軽な物をと思った時、実家から持ってきた中国製の扇風機に、目がいった。首振り機能が壊れたそれは、近未来からはかけ離れていた。もっと未来的な扇風機はないかと探したところ、ダイソンのエアマルチプライヤーにいきついた。
ネックなのは、五万円前後という値段の高さ。羽根のない構造はすばらしいが、普及しきった扇風機と比べまだ改良できる余地も多いはずだから、静音性や同電力あたりの送風力では扇風機のほうが勝っているのでは……等々考えているうちに夏になり、七月に芥川賞を受賞し忙しくなった。インテリアのことなどどうでもよくなり、仕事から帰宅しシャワーを浴びた後は、壊れかけの扇風機の前で全裸になり身体を冷ました。
今年に入り暑い日も出てきた春先、ようやくエアマルチプライヤーを買った。金銭的にも迷うことなく買えたし、買った品はじゅうぶん風量があり、静かだった。同製品を見ていると時折、買うのに散々悩んでいた一年前を思い出す。

初出:「DIME」小学館 2016年

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