アクタス伸張式ダイニングテーブル H.W.F DINING TABLE-B

一人暮らしの男の家で、必要とされる優先順位度が低い家具はなにか? ダイニングテーブルである。そもそも、結婚したり、子供がいたりでもしない限り、家で誰かと共に食卓を囲む機会などそうないだろう。独身でも女性ならともかく、男の家にダイニングテーブルがあるなど、聞いたことがない。自宅で仕事をする人には、仕事用のデスクがあればいい。一人暮らし歴の長い僕も、ずっと、仕事用のデスクで食事も済ませてきた。
小学生の頃からのデスクの遍歴としては、父親が独身時代から使っていたシステムデスク、大学生四年時にIKEAで買ったL字型デスク、数年前に買った無垢材のダイニングテーブル、そして七月から使用している昇降式のデスク。特につい最近まで数年間使っていた無垢材のダイニングテーブルは、自分が仕事用に使っていただけで本来の用途は食事用だから、当然のごとく食事をするのには適していた。
そんな自分が、今年三月、仕事用デスクとは別に、ダイニングテーブルを購入した。買ったのは、アクタス製の伸張式ダイニングテーブル「H.W.F DINING TABLE-B」。天板が正方形のタイプBを買った。日経新聞に掲載されていた、狭い住居空間での工夫特集、みたいな記事で紹介されていたのを読んだのが購入のきっかけだ。実際に店舗で見てみると、マホガニー材の深みのある色や、天板裏の、ネジとボルト以外の金属部品を使っていない木組みの伸張機構の美しさに心奪われた。すぐに購入してしまった。
さて、独身で、そんなに家に人を呼んだりもしない自分が、なぜそんなものを買ってしまったのか。いってみれば、文化的な生活の雰囲気を買ったのである。
自炊した料理を仕事用デスクで食べていた自分だが、いつもの料理を、ダイニングテーブルで食べてみると、贅沢をしている気分になった。夢想は広がる。伸張式だから、幅を広げた際は、六人前後で食卓を囲めてしまう。ちょっとしたパーティーもできるわけだ。こんなに洒落たものを買ったのだからと、学生時代から使っていた四角い折り畳みテーブルは捨てた。ダイニングテーブルにあわせ、イームズのシェルチェアや、ランチョンマットも買った。
しかし、困ったことにも最近気づいた。我が家でたこ焼きパーティーをしようと作家仲間たちから言われているのだが、人数分の椅子がない。普段使いもしない椅子を、わざわざ人数分買おうとも思えない。折り畳みテーブルだったら、床に座るから、人数が増えようが関係なかった。椅子を増やしたくないからと、立食スタイルというわけにもいかない。

初出:「DIME」小学館 2017年

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