無印良品 ダイヤルキッチンタイマー

一時期、無印良品の家具にハマっていた。
インテリアにこだわる人なら、若い頃に一度は通りがちな道なのだと思う。ポリプレピレン衣装ケースから始まり、タモ材ベッド、タモ材衣装箪笥……。芥川賞を取る少し前だから一年半くらい前から、ステンレスユニットシェルフに大ハマりした。それまではパイプに網状の棚板をはめてゆくメタルシェルフを使っていたが、鉄製なので錆びやすいし、パイプの太さのぶんのデッドスペースが四隅に生まれ、埃の掃除も大変だった。いっぽう、少し剛性は下がるものの、無印良品のステンレスユニットシェルフはデッドスペースが生まれず、大き過ぎもせず組み合わせ方が多彩で、なにより、ヘアライン加工をほどこした棚板といいデザインが素晴らしかった。
大物家具から入った無印良品尽くしの家だが、無印良品の家具を揃えすぎると、無印良品のショールームみたいになってしまう。ということで引っ越しを気に、ベッド等木目の家具はすべて他社製品に買い換え、家に残る大物家具はステンレスユニットシェルフとポリプロピレン収納ケースだけとなった。そのかわり、台所用品等の小物に無印良品の製品を次々と導入していった。その中でも一番活躍しているのが、ダイヤル式キッチンタイマーだ。
料理には当然のごとく使い回しているが、僕のメインの用途はそれではない。一日に一、二回ほどとる、仕事合間の昼寝に使っている。
小説家の仕事は、一日のうちに仕事をしている時間が長ければいいというものではなく、集中して書ける時間をどれだけ長く捻出できるかが大事だ。集中力が途切れると、運動したり、昼寝したりする。昼寝したいときは疲れているから、たとえば数字ボタン式のタイマーで、小さい液晶画面を見ながら時間設定をする些細な手間が、ストレスになる。いっぽう、ダイヤル式のタイマーであれば、本体外周のダイヤルをぐるっとまわせば、直感的に時間をセットできる。iPhone等でも顕著だが、やはり人間はなんでも直感的な操作を心地よいと思うものらしい。セットの所要時間でいえば、数字ボタンを押すタイプのタイマーの方が短時間で済むはずなのだが、目をしばたたかせながらダイヤルをぐるぐるまわす体感のほうが、使い手に快適さをもたらしている。

初出:「DIME」小学館 2016年

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