ニトリ オーダーカーテン

芥川賞を受賞し約五ヶ月後である二〇一五年の末に、今のマンションへ引っ越した。組み立てができる棚を組んではバラし、家具の配置を変えたり、床をワックスでコーティングしたりと色々やってきたが、リビングのカーテンだけは買っていなかった。
理由は色々ある。書斎の掃き出し窓には、前の住居から持ってきたブラインドカーテンをつけている。リビングの掃き出し窓には、レースのカーテンと、その手前側に遮光ロールカーテンをつけていた。ファブリックの雰囲気があまりないほうが、モダンな感じがしたのだ。
でもそれは一〇年以上前のモダンで、今はホテルっぽい重厚なカーテンがある部屋こそがモダンなのだと、インテリア雑誌を読んだり、各地のホテルに泊まったりして、気づいてはいた。買い物リストにずっと「カーテン、採寸」などと書いていたが、採寸が面倒で、買わないままずるずるときてしまった。しかし、今の住居にあわせて買ったわけではないレースカーテンにロールカーテンの組み合わせでは、遮光が完璧ではない。
それだと、プロジェクターで映画を見るときに困るのだ。家にテレビは置いていないがプロジェクターとサラウンドシステムを置いている自分は、引っ越す度にその設置場所に苦労してきた。スピーカーは五チャンネル設置することにこだわりがある。自身の視聴スペースも考えると、リビングにしか設置できないのだ。
夜になれば、なんでも視聴できる。だが、たまに、明るい日中に映画を見たいときもある。テレビ収録の直前に映像資料が送られてきたり、隙間時間に映画のコメントを書くため視聴したいときなど、夜まで待っていられない。完全なる遮光のために、カーテンを買わざるを得なかった。
新宿南口から少し歩くと、長らく紀伊國屋書店新宿南店だった場所に、今はニトリが入っている。書店が格安家具屋に変わった、という事実に対し小説家たる自分は複雑な気分だが、便利な場所にあるのだから行くしかない。昔から、ニトリのカーテン類の質の高さ、そして安さは知っていた。少しでもモダンなカーテンにしようと、模様入り厚手シルバーの、ヒダが大きいものを三万円ちょっとでオーダーした。支払後、紙のメジャーを渡され、自宅で計ってみてもしサイズが違ったら今夜中に電話してくれとのことだったが、サイズに問題はなかった。
届いたカーテンは、完璧だった。日の光に左右されず、自由な時間帯にプロジェクターで映像を見られるようになった。面積が大きいから、部屋の印象も変わる。最近は、カーテンのモダンさに、フローリングや壁紙の雰囲気がついてきていないなと思ってもいる。引っ越して、またそこでカーテンを新調するしかないのか。

初出:「DIME」小学館 2017年

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