DJI OSMO

温泉番組の収録をこれまでに二度行っている。NHKBSプレミアムの番組で、テレビ的にはド素人の自分がメインの旅人となり、各地温泉をまわるという内容だ。民放の従来の温泉番組といえば、女優さんたちがタオルで身体を隠し化粧も落とさぬまま入浴し、湯面をちょっとかきまわしたあと、料理を食べるシーンなんかにうつる。NHKの制作陣は、温泉番組をうたっていながら全然温泉を映していないそういったものとは違う、温泉に特化した番組を作りたいという。カメラの前でマナー違反をしたくないためタオルを巻いての入浴はNGという僕からの要望も、先方からは喜ばれた。昨年秋に北海道各地の温泉を四泊五日でまわり、今年冬には和歌山の温泉を二泊三日でまわった。温泉を魅力的に映すことがメインであるから、最新鋭の4Kカメラやウェアラブルカメラ、防水カメラなど様々な機材が投入された中、度肝を抜かれる機材に出会った。
カメラマンとは別に、ディレクターが片手に持っているスティック型のシルエット。上から吊り下げられた球体の真ん中にはレンズがあり、三六〇度ありとあらゆる方向を向いたり、あるいは、持っている人が早歩きをしても、ずっと一つの方向を捉え続けたりすることができている。休憩中に聞けば、OSMOという、ドローン技術を応用した4Kカメラらしかった。最大のウリは、大がかりな機材を用いずとも手ぶれのしない映像が撮れてしまうところにある。「ありあわせの技術で作ってしまった」ところがすごいのだと、皆感心しながら話す。値段も八万円前後と手頃だ。ネックなのはバッテリーが四〇分ほどしかもたない点と、内蔵マイクの性能の悪さ。ただ、撮影スタッフたちは予備バッテリーも沢山用意しているし、各種マイクで音は別撮りしているからそれらの点も問題ない。
先日、広島県と愛媛県を渡す「しまなみ街道」を自転車で走る機会があった。それにあわせ、バイクマウントキットや予備バッテリーと一緒にOSMOを購入した。手ぶれなしの美しい映像を撮影しておけば、皆に自慢できる。撮影しながら七二キロの行路を走ったが、いざホテルで映像をチェックしてみると、自転車のハンドルの高さにマウントされたOSMOのレンズの位置と、橋の欄干が干渉していた。肉眼では見えた橋からの美しい景色が、ぜんぜん撮れていなかった。

初出:「DIME」小学館 2016年

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